心のファイル 2012.02.12

老人施設を訪ねた時のことです。突然、廊下で「まぁ、きれい。きれいなネックレスね。」と声をかけられました。きれいなものが好きだという100歳になるその女性もまた、首にきれいな金のネックレスをしています。そして、そのネックレスを手に入れた時のことを話してくれました。

それは、その女性が女学生の頃、道端でとても生活に困った様子の人に頼まれて、あまりにかわいそうに思い、ニセモノかもしれないと思いながらも買った物でした。そして、家に戻りその話をすると、両親に叱られ、先生にも叱られたそうです。ニセモノに違いないし、危険な人かもしれないから近づいてはいけないと。

その方は、叱られて、悪いことをしたのかなと思いつつ、でもあんなに涙を流して喜んでくれたし、ニセモノだったとしても良いと思ったそうです。

「そのときに思ったの。私は一生、困った人の力に少しでもなれるように生きて行こうって。十分にできなかったけど、少しは人の役に立てた人生だと思ってる。」

100 歳とは思えないくらいお元気で明るい笑顔でした。

こういった経験をもししたら、「こんなに叱られるなんて、もう二度とそういう人には近づかないようにしよう。」･･･ などと考えることが多いのではないでしょうか。そのように考えていたとしたら、違った生き方、全く違った人生になっていたことでしょう。

人は、いろいろな経験をします。嬉しいことだけではなく、理不尽なこと、辛いこと、悲しいことも経験します。その経験は選べないことも多いですが、その経験によって何を考えるかは、自分自身で選べます。

心のファイルに何を記載するかが、その人の生き方になって行くのでしょう。できればこの女性のように「幸せファイル」を増やせると良いですね。