失敗が大きな人をつくる 2014.03.18

先日行われたソチオリンピックでは、いくつもの感動的な出来事がありました。
フィギュアスケートの浅田真央選手は、金メダル候補でありながら初日16位という誰もが想像できなかった結果になりました。日本中の期待を背負って、といっても過言ではない状況でしたから、さぞかし辛かったことと思います。ところがその翌日のフリー種目では、見事な演技を見せて自己最高点を出し、沢山の人に金メダル獲得以上の感動を与えてくれました。

どんなに努力をしても失敗を避けられない時もあります。浅田選手は、人は失敗を乗り越えられること、その時には以前よりもっと大きな人になっていることを美しい演技とともに見せてくれたように思います。

では、どうやってたった一日で失敗を乗り越えることができたのでしょうか。

浅田選手の様子を取材した記事によると、16位になった日は眠れず、翌朝の練習に遅刻してきて、ボーっとした状態でどうなるか危ぶまれたそうです。佐藤コーチは彼女に、「過去に発熱でもっと辛い状況でも滑り切った選手がいる。倒れたら自分がすぐに駆けつけるから」と叱責したそうです。浅田選手はその時はぼんやり聞いていましたが、その後、昼食をしっかり食べ、昼寝をして目覚めたとき「できないことはない」と思ったそうです。そしてあの見事な演技をやり遂げました。

この記事に、失敗から立ち直り、最高の状態にするヒントが沢山あります。
まず、失敗したときに多くの人は、「早く気持ちを切り替えて、次で挽回しなければ」と思うのではないでしょうか。そう考えるとかえって焦りや緊張でいっぱいになり、心は縮こまり、身体は緊張で固まり、ますます失敗してしまいかねません。浅田選手は落ち込む時はしっかり落ち込み、無理に切り替えようとせずにいました。その後しっかり食べ、眠りました。これらによって自然な心の回復の過程を踏むことができたのだと思います。そしてごく自然に「できないことはない」と思えてきたようです。

「できないことはない」とは物足りないような考え方ですが、この心境も恐らくいい感じに実力を出すことにつながったのでしょう。「できるぞ、やるぞ」と考えていたら力が入りすぎてしまったと思います。また、佐藤コーチの言葉は、とても「あたたかな叱責」 だなと思います。安易な励ましや非難をせず、「思い切りやりなさい。それでも失敗したら僕が駆けつけるからね（そばにいるからね）」 という大きな器に包みこみました。浅田選手はその懐で安心して自分を取り戻すことあできたのでしょう。

失敗は怖いけれど、恐れていたら大きく伸びる可能性も減ってしまいます。
「失敗が大きな人をつくる」です。